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国語の学力調査 CBT化への期待

令和7年度以降、全国学力・学習状況調査(悉皆調査)がIRT(項目反応理論)を活用したCBTで実施される予定である。ICT端末上で出題・解答することで、多様な方法・環境での出題・解答が可能になっていくとともに、調査結果を国や教育委員会、学校における活用幅が広がり、充実していくことになる。

PBT(PはPaper)から一歩前進した、令和5年度の全国学力・学習状況調査の中学校英語「話すこと」調査では、動画を視聴した上で、英語で話して解答させる問題を出題していた。このようなマルチメディア(動画・音声等)や様々なツール(表計算機能等)を利用することにより、ICTを活用した授業で児童生徒が身に付けた力を、より多面的に測定できるようになることが期待されている。

ここでは、国語の学力(学習指導要領国語の目標及び内容)をCBTでどのように測定できるか、その可能性(期待)について3点を提起したい。

Focus1 従来のPBTとの差別化を図る

従来、国語の学力調査はPBTで行われ、そこで用いられるテキストは一定の文字言語である。それが文字だけの連続型テキストであったり、非連続型テキスト(写真、図表、グラフ等)が加わったりして出題される。国語は言語そのものを対象としており、学力調査の第一義は文字言語の読解がベースにあることは自明である。では、全国学力・学習状況調査では、特に国語科の三領域(「話すこと・聞くこと」、「書くこと」、「読むこと」)をどのように出題しているのであろうか。次は、その特徴について整理したものである。

「話すこと・聞くこと」

実際に「話している」「聞いている」「話し合っている」様子を文字言語で表記し、その状況を可能な限りリアルに再現しようとする中で、話す内容や話し方、他者が聞いた(読解した)内容や聞き方(聞き返し方)、話し合っている内容や話し合い方に関する能力を出題する。

◇「書くこと」

文章の種類や形態(説明文、報告文、意見文等)の特性を踏まえ、その一連の形成過程において必要となる能力を取り上げ、一定の記述式問題(100字程度を含む)として出題する。

◇「読むこと」

説明的な文章と文学的な文章の「構造と内容の把握」と「精査・解釈」を通した、「考えの形成」に関わる能力を主として取り上げて出題する。一つの資料のみならず複数の文章は並べて比較したり関連付けたりして出題する場合もある。昨今、説明的な文章では、非連続型テキスト(図表、グラフ等)も頻出する。

国語のテキストは文字言語が中心となるので、PBTとの差別化を図ることに難しさがあることは否めない。しかし、文字言語での説明を極力簡潔に示すことはできる。CBTの特性を生かす問題は、場面設定を冗長的に説明するのでなく、動画や写真、イラスト、それらに加えて吹き出しや記号、矢印などを挿入するなどして、そのシチュエーションをいっそうリアルにイメージできるようにしたい。そのためには、問題場面(大問及び各設問)を概ね一枚の画面に簡潔明瞭(音声や文字を添えて)に示すことで、解答者は出題される場面に入り込み、他の情報に邪魔されずに集中して解答することができるであろう。

 CBTの特性を生かした問題では、特に「話すこと・聞くこと」においてPBTとの差別化を図ることができる。ヘッドフォンセットを用いてリアルな音声言語によるやり取りの問題において、実生活に生きて働く様々な能力を測ることができる。先に述べた、中学校英語の出題形式などを大いに活用していくことが期待される。

Focus2 ICTを活用した国語科授業を模擬化する

国語の学力調査のCBT化は、実際に学校で取り組まれているICTを活用した国語科授業の状況を前提に置くことが重要である。CBTの特性を生かすことに意識が強くなり過ぎると、日々の国語科授業で行っている以上の過度な端末操作や言語操作を求めることにつながりかねない。あくまで、全国学力・学習状況の調査であることを忘れてはならない(民間での調査も同様)。日進月歩で更新されるコンピューターの処理機能は膨大であるが故に、こうした操作に時間を要したり、解答方法に混乱が生じたりしないよう留意したい。

国語科のICT活用では、単元や題材などの内容のまとまりの中で育成したい資質・能力との関連を明確にし、効果的な学習場面を検討することが重要である。国語科においてICTの効果的な活用場面として、主に次の5場面が考えられる。

①情報を収集して整理する場面

②自分の考えを深める場面

③考えたことを表現・共有する場面

④知識・技能の習得を図る場面

⑤学習の見通しをもったり、学習した内容を蓄積したりする場面

この5つの場面を学習指導要領国語で身に付ける力と関連付けた上で、教師が5つの場面でどのように発問し、どのような言語(学習)活動を設定するか、教師の発問と児童生徒の活動をペーパーではなくてICTをどう結び付けるか等を検討していく、その先に自然とCBT化への移行が見えていくことであろう。

CBTの出題に当たっては、ICTを活用した国語科授業の現状を把握し、それを模擬化することから始めてはどうだろうか。一方、一人一台の端末を児童生徒に今後どのようにICTを活用してほしいのかといったメッセージを届けることも、CBT化に期待されることであろう。

Focus3 「思考・判断」から「表現」への様相を捉える

現在の全国学力・学習状況調査では、全体を一覧化できるがものの、前の問題が後の問題に影響しないような作問設計をとっている。それは、各問題がそれぞれ分断された個別の資質・能力の実現状況を見取るためである。しかし、CBTでは先々の問題のストーリーは分からない設計にすることができる。前の問題の流れに応じて、後の問題の出題の仕方を工夫することができる。例えば、後の問題で、「正解は○○でした」という情報を与え、その理由や思考過程を遡って解答(説明)するような問題設計が可能となる。「前の問題で、なぜ、あなたはそのように解答したのですか」という被検者の内言(思考、判断)を(誤答)分析することもできる。つまり、CBTの特性として、メタ認知能力へアプローチしたいのである。PBTとの差別化とも関連する。それは、決して難しいことではない。問題作成時において、前の問題や画面に戻ることができないようにすればいいだけである。こうした設定は、通常の授業場面では日常的に行われている。

「思考・判断」から「表現」は本来往還しているが、従来の学力調査ではその様相を捉えることはできなかった。ログ(起こった出来事や結果についての情報などを一定の形式で時系列に記録・蓄積したデータのこと)を分析することで、調査結果を日々の授業へ還元することも可能になる。CBT化において思考力、判断力、表現力等に注目することは、国語科のみならず各教科等の特質に応じた見方・考え方がどのように働いているかとう現状を把握し、その能力の向上を探ることにもつながっていくであろう。

(参考)

・令和7年度以降の全国学力・学習状況調査(悉皆調査)のCBT での実施について【概要】、令和6年9月改定、文部科学省総合教育政策局参事官(調査企画担当)付学力調査室

・国語科指導におけるICTの活用について、文部科学省

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